その心にはいつも・・・




「ジョミー見ていてくれたでしょ!」
嬉しそうにトォニィはジョミーに話しかける。
だがジョミーは背を向けたまま答えてはくれない。
それでもトォニィは続ける。
「そしたらジョミーも同じことを考えていて
 凄く嬉しかった・・・」
"ジョミーと同じ"ことを喜ぶトォニィの言葉。
ジョミーはその言葉を・・・
じぶんのしたことを・・・
自分が決めたことを・・・
その結果を・・・
胸に刻みつけるようにゆっくりと目を閉じた。
『事の善し悪しは、結果が出てみなければわからないさ』
その言葉を呼び起こす。
「まただ!」
それがトォニィに伝わってしまったのか、突然叫びを上げた。
「トォニィ?」
初めて振り向いてみると、
そこには少し皮肉げに笑みを浮かべたトォニィの姿。
「ジョミー・・・何を考えているか当ててみましょうか」
読まなくとも、手に取るようにわかるそれを
トォニィは一つ一つ上げていく。
「地球のこと
 還りつくこと
 そしてソルジャー・ブルー・・・」
この部屋に足繁く通っているのが、まさにそう言うことだ。
「いつも・・・いつも・・・いつもいつも」
決して欠かすことなく通い続ける。
まるで、ここにその人が"いる"かのように。
その人を確認するかのように。
「もう死んでしまったのに?」
ジョミーの肩が僅かに動いた気がした。
「なくしてしまったのに・・・どうしてなの?
 なぜ取り戻そうとするの?
 忘れてしまえばいいのに」
ジョミーは何も言わず、目を伏せた。
「皆がジョミーはかわったと噂してる」
そんなジョミーをトォニィは背後から抱きしめる。
「・・・でもあなたはちっとも変わってなんかいやしない。
 ぼくにはわかる。
 いつでも貴方の心はソルジャー・ブルーに帰って行くんだ」
返ってきたのは、やはり沈黙。
トォニィは苛立った。
ジョミーの心が深すぎて感じられないから。
だがその心には『ソルジャー・ブルー』がいるのを知っているから
「どうして!?
 ぼくの方が強い!ぼくの方が役に立つ!
 ぼくの方が貴方を思ってるし、大切にできるのに!!」
「とぉ・・・あっ!」
叫びに驚いて振り返ろうとしたジョミーをトォニィは勢い任せに
寝台に押し倒した。
ソルジャー・ブルーの。
「トォニィ!」
批難するジョミーの上に馬乗りになってトォニィは続ける。
「ほら、貴方に触れることだってできるんだ」
「はっ・・放せ!!」
だがトォニィは放さない。
「ソルジャー・ブルーなんてもういらない。
 ジョミーに必要なことは全部ぼくがあげる」
この寝台に、もう主はいない。
言いながら唇をジョミーのそれに寄せた。
『止めろ!!』
触れ合う直前。
トォニィはビクリとして動きを止めた。
本気のジョミーの言葉に、身体も心も逆らうことは出来ない。
ゆっくりと、恐る恐るジョミーの顔に視線を送れば、
真っ直ぐに見つめてくる瞳。
怒りではない。
もっと強いものがその瞳にはあった。
「そんなに・・・・」
顔を歪ませながらトォニィは零すように呟き、
逃げるようにその場から姿を消した。






ジョミーは起き上がって身形を整える。
トォニィから己に向けられる、痛いほどの思慕はちゃんと知っていた。
「だがぼくは・・・もう、『ジョミー』ではないから・・・」
自分はあの人の前でだけ『ジョミー』でいられた。
だから『ジョミー』はソルジャー・ブルーに捧げてしまった。
代わりに『ソルジャー』を引き継いだ。
ソルジャー・シンである自分は
『誰か』の想いを受けとることも感じることも出来ない。
自分の想いだって感じない。
ソルジャーであることを決めた以上
たとえ何を犠牲にしようと戦い、
たとえ傷つこうとも守らなければならない。
『皆』の意思を受け取らなければならないから。
『皆』の想いを叶えなければならないから。
非情と言われようと、迷うことで犠牲を出してはいけない。
「希望を、果たすのだ」
機械によって紡ぎ続けられる世界で、
まだ失われていない、
人の、ミュウの、
過去の、今の、未来の、希望を―――――。



ジョミーはそっと寝台に視線を送る。
『貴方が感じたという未来はどんなものでしたか?』














コメント***

大幅に漫画から引っ張ってきてみました。
しかしトォニィ、ごめん・・・。
所詮ブルジョミ人間です。
が、さすがに可哀想かと思い、トォニィ立ち去り後は隠しました。
反転してみられます。

アニメ18話が何とも何だったので・・・。
トォニィにあそこで後ろからぎゅってやって欲しかったです(腐)
ジョミー信徒が激減していきそうな中で
彼には是非頑張ってもらいたい。