自分はもう戻れないから。





"彼"はせめて真っ白な理想郷を追いかけて欲しい。

甘い、のはわかっている。
だが今は"ぼく"と"彼"がいる。
ぼくがいるなら、"彼"は業を背負う必要はない。
ぼくにはもう取り戻せない、暖かな陽だまりにいてほしい。

世界は綺麗なものだと信じ、
世界は優しくなれると信じ、
戦う以外の道が選べると信じている

そのままでいて欲しい。
ぼくができなかった理想を叶えて欲しい。
純粋で。
真っ白で。



と、思っていたのに。




「何でこんなことを知っている」
圧し掛かってくる相手を半眼で睨み付ければ、溜息を零される。
「ブルーに聞いてよ」
あの爺!
"純粋なぼく"に何を教えてるんだ!!!
ブルーが生きていなくてよかったと思ったのは初めてだ。
でなければぼくが冥土に送っていたかもしれない。
違うのはわかっていても、やはりブルーなわけだから
顔を見たらおそらく殴っていた…。
そりゃ、まあ…ぼくだってブルーに教えられたわけで……。
でもそれはかなり長いプロセスを踏んで…
"彼"の年頃ではまだキスしかしていなかったはずだ。
なのになぜここまで知っている。
"彼のブルー"はどれだけ元気なんだ!!?
「知っている理由はわかった。
 で、なぜ今それをする必要がある?」
問うと、きょとん、という顔をされた。
「え?だって大人になったら2日か
 少なくとも1週間に1度はしないといけないんじゃないの?」
「そう、ブルーに聞いたのか?」
「うん」
きっぱりと頷かれた。
あのくそ爺!!!
大体、なんでそんな教え方をしたんだ!
あなたが出来なくなったらどうするつもりだったんだ!!?
「しないといけない」と思っているぼくが
ほかの誰かを頼ったりする可能性は考えなかったのか?
たまたま近くにぼくがいて、"彼"のブルーはまだ生きていて
それもかなり元気なようだからまだいいが、
"彼"への口説き文句もぼくと同じようなものということは
つまり"彼のブルー"だってもう寿命なのだ。
ぼくのブルーのようにもし逝ってしまったらその後は?
"ぼく"を淫乱にでもするつもりか!!?

泣きたくなった。
そりゃまだ思考は真っ白だろうけど
余計に厄介じゃないか!!!


「いいか、よく聞けジョミー」
「何?ソルジャー・シン」
「お前の認識には多少誤解があるようだ」
例の人に態と植えつけられた誤解だろうが。
「誤解は解いておいたほうがいい」
その日からぼくは、徹底して"ぼく"に道徳を教えた。
あと体を繋げる行為の意味もしっかりと。
とりあえず腹癒せに年寄りの冷や水やらなにやらの言葉を教えて
年寄りを無理させないためにはあまりしないほうがいいとも
吹き込んでおいた。


















自分を守ることに必死なシン様(笑)