「ん〜。ねえ」
ちらりと自分より頭ひとつ大きな、同じ顔に視線を向ける。
「何だ?」
面倒くさそうな視線と声で返される言葉。
将来自分もこんな風になってしまうのだろうかと悩みながらも
とりあえず、呼びかけた理由を述べる。
「欲求不満なんだけど」
正直に述べれば冷たい視線。
「自分で何とかするか、元の場所に還るまで我慢しろ」
「なんだよそれ!
こんなこと人に言えないからきみに言ってるのに!」
「ぼくだってどうにもできない」
「この間シテあげたじゃないか!」
「勝手にヤッたんだろうが!!」
叫べばそう返されてしまった。
むっとはするが確かにそのとおりだ。
「ならキスしてよ。
あの人のキス。
キスは流石に自分じゃ出来ないし
きみはぼくよりよく知ってるだろ?」
どうしてこんなに拘るのかは、
純粋にまだ自分でするのに抵抗があるからだ。
誰かとしたほうが相手もしているので
一人でするより恥ずかしさが減るし、
何よりもこの場合は所詮相手は自分なのだから
下手な羞恥心も生まれずに済む。
だから、もうなし崩しでその展開に持ち込んでやると考えながら
そんなことを言ってみた。
しかし予想外の展開が起きた。
胸倉を引き寄せられたかと思えば、唇に相手のそれが押し付けられる。
さらに驚いて半開きになっている唇を割って舌が入り込んできた。
「んぅう!・・・ん・・あ・・ふぁ・・んん・・」
その舌が、まるであの人のように口内を蹂躙していく。
当然弱い場所など丸分かりなのだから、そこを丁寧に刺激されてしまう。
「あ・・・ふっ・・・んん・・ぁ・・はっ、あ・」
膝から力が完全に抜けて、相手に縋って何とか踏みとどまっていると
ようやく解放された。
へたりと座り込むぼくを、まるであの人のように
濡れた唇を赤くしながらも、落ち着いた表情で見下ろしている。
「っ!!」
「満足したか?」
冷静さの中に笑みを浮かべてそんなことを言ってくる相手。
「出来るか!!!」
そう、出来るはずがなかった。
あんなキスをされてしまえば余計に体が疼くというもの。
だが、そんなぼくの泣き言は取り合ってもらえなかった。
「キスを望んだのはお前だ。
わざわざその希望をかなえてやったんだから
文句を言われる筋合いはないぞ」
「くっ!」
睨みあげると、やはり冷静な表情でぼくの一点を指差す。
「それ、始末するまで絶対に人前に出るなよ」
「当たり前だ!」
「じゃあ、ぼくはブリッジに戻るから」
「ちょっ、本当においていくの!?」
「きみがその状態でぼくまで動けなくなったら、
何かあったときに困る」
「う・・・」
それはそうだ。
ぼくらは”ソルジャー”なのだから。
そう言われてしまえばぼくだってそれ以上言うことは出来ない。
「お前も仮にもぼくなら、夜までくらい我慢しろ」
「夜になれば付き合ってくれると?」
「基本的には断る。
ぼくに触れていいのはあの人だけだ。
だがきみは一応ぼく自身な訳だし、この間のことではないが
ぼくだってほかの誰かにきみのそんな姿を見られるのは
御免だからな。
本当につらいならたまには相手をしてもいい」
そう言い残して背中を向けて出て行ったが、
耳が微かに赤かった気がするのは気のせいではないだろう。
「はああ・・・ぼくってとことん素直じゃないというか・・・
なんだかそんなところばっかり認識させられちゃうよ、本当」
あれが自分でなかったら可愛いとでも何とでもいってやれるのに
残念ながらあれは自分で、素直じゃないところが可愛いなどと
思った瞬間自分の精神に大ダメージを受けるのだから堪らない。
「でも、どうしよう」
恥ずかしいのを耐えて己で処理するか。
辛いのを耐えて、彼を待つか。
「うあ〜〜余計に悩むじゃないかあ!!」
ジョミーは彼を誘おうとしたことを後悔する羽目になった。
キスの時点でとめておけばシンジョミ。
キスはきっとシン様のほうが巧いんですよ。
経験豊富だから(笑)
”あの人”の癖もばっちりでしょうしね(苦笑)
ジョミシンは、すべてジョミーが実は色々まだ恥ずかしいから的な
展開らしいです。
とりあえず、互いに互いの恥は己の恥なので表に出したくない、と(笑)