「皆ショックを拭いきれないようです」
「そうだろうな」
報告に、ジョミーはそう頷いた。
タイプ・ブルー三人もの死。
それだけではない。
沢山の仲間の命が散って行った。
トォニィも・・・先程のように泣き叫ぶには至らないが
初めて・・・『死』を理解して初めて、大切な仲間を失ったのだ。
泣くなとは言ったものの、
それが無理であることはジョミーにもわかっていた。
だから何も言わない。
死は自らが受け入れなければならないものだから。
他の者が何と言おうと、意味がないのだ。
だから涙を流す。
感情を洗い直すために。
「貴方は泣かないのですか?」
ふと、ハーレイが訊ねた。
その言葉にジョミーはハーレイを振り向いた。
口元に薄く苦笑を浮かべて。
「泣く?ぼくがかい?
戦争の最中にソルジャーが何故泣くんだ?
なんのために?誰のために?」
「それは・・・」
誰、と問われれば仲間のために、だ。
だが、ジョミーも言った通り今は戦争の最中。
ソルジャーである彼が悲しみに沈んでしまったら
全てのミュウが影響を受けてしまう。
それはミュウの敗北を意味してしまう。
そう、ジョミーはずっと前を向いていた。
感情豊だった、それを表情に素直に出していた少年が
ナスカを境に真っ直ぐに前だけを見上げるようになっていた。
だが、あれほど戦いではなく協調を訴えていた彼が
戦う事だけを考えるのは、どれほど心に涙を落とすのだろう。
しかしそれを実際に流すことは、ない。
(ソルジャー・ブルー)
思わず、先代のソルジャーを思いだして
そしてハーレイは気付いた。
ジョミーは『泣き場所』を失ってしまったのだ、と。
ソルジャーである彼が頼れたのは、ブルーだけだった。
それ以外の者達には頼られることはあっても、頼ることはない。
誰の支えも受けられず、
それでも心の中にある『地球へ』という約束だけを支えに
ジョミーは立ち続けている。
老成したものならまだしも、年若い彼が
涙を流せないというのはどれほどのものだろう。
涙を流せないということは、
感情を洗い流せないということ。
全ての感情をその心の中に溜め込み続けるということ。
その全てを背負って、それでもジョミーは闘い続けている。
苦笑を浮かべたその顔の瞳が、
涙とは呼べないほど僅かな潤みを見せようと。
彼は誰からの手も取りはしないだろう。
ハーレイは己の拳を握りしめるしか出来なかった。
ブログに書いた小話です。