※原作を含みます


漂流することに疲れたミュウ達は、一時の平穏を求めて
赤き星、ナスカへと降り立った。


人間に対する憎しみ以外の感情。
安らぎ。
暖かい心。
それらを知ってもらいたくて、ソルジャー・シンは
反対を押し切ってそれを決行した。


それは間違いなく幸せで優しい時をミュウに与えた。
さらに、SD体制で失われてしまった
本当の子供と、家族、そして希望を手に入れた。


けれど・・・。


安らぎを知らなかったものには、甘すぎる果実だった。
地球に行かずとも、生きていける。
そう、彼らに思わせてしまった。


それは、ミュウに対する根本的な扱いを解決して
本当に安らかに暮らせる未来を望む者たちと、
今のこの幸せを望み、地球からの独立を望む者たちの間に、
深い亀裂を生んでしまった。


そして・・・。




「サイオニックドリーム、効きません!」
「何という意志の強さだ」
ただの人間。
しかし思念の扱いに長けたミュウの心理攻撃を受け付けない。
ブリッジは騒然となっている。
「こんなとき、ソルジャーがいてくれれば・・・」
ハーレイは思わず呟いた。

ソルジャー・シン。
ジョミーは現在深い眠りについている。
戸惑い、分裂しつつあるミュウ達の心を一つにし、
正しい道を選択するために、心の奥深いところに潜ってしまっている。
彼は感情を隠すことなく、ありのままで行動しているように見えるが
その実、見せている心より内側には誰の介入も許さない。
だれも、目覚めさせることができない。
ミュウの女神である、フィシスにすらも。
それほど、彼は深い悩みを一人で抱えてしまった。

だが・・・。
フィシスは走り出す。
深く眠るソルジャーの元へ。
ジョミーはソルジャーだ。
ミュウの危機を救えるのは、彼しかいないのだ。
「ジョミー、どうか目を覚まして」
ミュウに危険が迫っている。
それを必死に伝える。


(ミュウの、危機)


ミュウの為に眠りについていた彼は
ミュウの為に眠りの底から一気に浮上した。
そして、向かってくる大きな敵を感じ取った。


(撃ち落とせ)


その思いとともに、ナスカに降りようとしていた船は爆炎を上げた。

船の侵入を阻止できた事実に安堵して、確認をとろうとしたブリッジに
唐突に強い思念が舞い降りた。

『止まれ!』

ジョミーの声が船に響き渡る。

『指示をするまで待機』

間違いなくそれがジョミーの”声 "だと認識して
ミュウ達には歓声が沸き起こる。
眠っていたソルジャーが目覚めた。
彼がいれば大丈夫だと、思える。
そして彼らはソルジャーの意志にしたがい、待機する。
ジョミーの声が響くより先に飛び出したリオを除いて。


ジョミーはまだ氷室から目覚めたばかりで動きの悪い体を
引きずるように外へと向かう。
「まだ、だ・・・」
まだ、自分を眠りの底から呼び起こしたものは消えていない。
「ジョミー、むちゃをしないで!
 あなたはまだ目覚めたばかりなのに・・・」
フィシスが慌てて止めるが、ジョミーは引き寄せられるままに
船が落ちたほうへと歩を進めた。
(感じる)
強い存在のもつエネルギーを。
大きな、敵なればかなり危険な。
煙の奥に、倒れた人影を見つけた。
やはり、まだ生きている。
『おまえは何者だ』
飛びかかりながら、精神に直接問い掛ける。
「うっ・・」
呻きをあげながら、相手が覚醒した。
そして、目覚める瞬間、その思考が読み取れた。
「えっ・・・」
驚いたジョミーは思わず動きを止めてしまった。
土煙の向こう。
相手は反射的なのだろう。
ものすごい早業でパラライザーを打ち込んできた。
ガードはしたが、間近だったため衝撃で倒れてしまう。
「ジョミー!」
フィシスがその光景に悲鳴を上げる。
叫ばれた声に、驚いて動きが止まった。
覚醒した思考で、たった今撃った相手を見下ろす。
金髪が、土埃にまみれていた。
「ジョミー・・・?」
呟いた名前に返されるのは、忘れようもない澄んだ瞳。
そして。
「キース」
忘れていなかった声で、呼ばれた。







コメント***

再開はやっぱりナスカで(笑)