星の下だろうと日の下だろうと、見違えようのない金色の髪。
街を歩いていて、見かけた姿に思わず声をあげた。
「ジョミー?」
「キース!?」
呼ばれて振り返ったジョミーもまた驚いて声をあげた。
「本当にジョミーなのか?」
「はは、本当にまた会えるとは思わなか・・・」
言いながら笑顔で歩み寄ってきたジョミーは足を止める。
キースの格好を見て、目を見開いた。
「軍・・・服・・?」
「待て!」
思わず足を引こうとするジョミーの腕をキースは捕らえる。
「あ・・・」
「何故逃げる」
「それは・・・」
軍人だとは思っていなかった。
軍人はミュウにとって最も危険な敵だ。
それも、キースが来ているのはメンバーズの制服。
ミュウと闘う、彼らの。
「ぼくは・・・もう、帰るから・・・」
そう搾り出して逃れようとするのを、キースは許してくれない。
「放してくれ」
「行くな!」
強く、キースは言う。
「俺は再びお前と会える時をずっと待っていたんだ!
 前のように、何もないまま離れたくはない」
「キース・・・」
「約束だろう、歌を聴かせると」






こんな場所では歌えない。
というジョミーの言葉で、
とりあえず二人は公園まで移動することにした。
ちなみに先程の場所は、人通りがあるストリートだ。
よくもまあ、人目も憚らずあんな会話が出来たものだと
ジョミーは思う。
この時点でジョミーの中のキースは天然に位置付けられた。
「飲み物を買っていくか」
「本当に歌わせるの?」
「約束だろう?」
「そりゃ、したけど・・・」
改めて人前で歌うなど、恥ずかしいではないか。
「それで、何を飲む?」
だがキースはそんなジョミーの心情に気付いていないのか
そんなことを聞いてくる。
「じゃあ、オレンジスカッシュ・・・」
思わず溜め息交じりにジョミーは希望を述べた。


公園に着くと、ベンチに座ったジョミーにキースが
先程購入した飲み物を渡す。
「ほら」
「ありがとう」
渡されたオレンジスカッシュにジョミーは口を付ける。
その様子を見てキースもジョミーの横に腰を下ろし、
珈琲を一口含む。
ふうっと息を吐いて、口を開いた。
「しかし、まさかまた同じ星にいるとはな」
「うん、ぼくも驚いた。
 きみ、色々な星を飛び回っているのかい?」
キースが軍人だと知ってから何処かぎこちないが、
それでもジョミーは笑顔を見せた。
その顔に、キースもどこか微妙な笑みを浮かべる。
「まあ俺は色々な惑星の探査があるからな」
「探査?
 へえ、どんな?
 って、機密事項か。聞いたらいけないね」
と言ってくすりと笑うジョミー。
ちらりとジョミーを見て、キースは珈琲に目を落とす。
「ミュウ、という名を知っているか?」
ビクリとジョミーの身体が震えた。
ミュウという存在は一般には知られていない。
故にそれだけで、答えには充分だった。
「やはり、お前はミュウなのか?」
パシャっとジョミーの手から落ちたオレンジスカッシュが溢れる。
慌てて逃げ出そうとするジョミーの手首を掴む。
「放せ!」
だが子供の細い手首は軍人のキースの強い握力に捕らわれたまま
逃れることを許されない。
ジョミーは怯えるような瞳でキースを見ると必死に身を引く。
「放せ放せ放せ!!」
叫ぶ声に合わせるように、キースに静電気のような痛みが幾重にも走る。
だがキースは放さない。
「落ち着け」
言いながらジョミーを引き寄せ腕に抱き込む。
「落ち着け、別にどうこうする気はない」
その言葉に、ジョミーの動きが止まる。
抵抗が無くなったのを確認してキースはジョミーを解放する。
その瞳は驚きに揺れていた。
「どういう・・・」
問うジョミーの頬に手を添える。
何処か苦しげで切なげな表情。
「私情を挟むつもりはない。
 だがいま俺は休憩時だ。
 軍人として動く必要も、ない」
「キース・・・」
ジョミーも悲しげに顔を曇らせた。
「じゃあ、やっぱりぼくは行かないと。
 きみの思う通り、ぼくはミュウだ。
 ・・・きみの休憩が終わる前に、ぼくは逃げないと・・・」
キースの手に己の手を重ねて、そっと引き剥がす。
「そう、だな・・・」
為れるままにキースはジョミーから手を引いた。
「見逃してくれて、ありがとう」
「いっただろう、私情で見逃したわけではない」
視線をそらしながらのキースの言葉に、ジョミーは僅かに笑みを見せる。
「そうだったね」
「お前とは・・・別の出会い方をしたかった・・・」
「ぼくもだよ」
俯いて、ジョミーはそう答えると踵を返す。
「さようなら」
言葉とともに立ち去ろうとするジョミーの背中が強く抱きしめられた。
「キース!?」
「本当にミュウは人類の敵なのか?」
苦しいキースの声。
まるでその心が悲鳴を上げているような。
ジョミーという個人に触れて知ってしまった心と
SD体制の"真実"に挟まれて。
ジョミーはキースの手を強く握る。
「そうでないなら、そうではないと思って貰えたら・・・」
悲しげなジョミーの声はそこで途切れた。











敵でなかったら、どれほど良かったか。
日の下で普通に会話が出来たら、どれほどに・・・。





コメント***

キース、甘いっすね。
見逃してます。
アニメキースでないのは確かなようです(笑)