どこかここに無いような、それでいて強い意志を宿した瞳。
幼さと妖艶さが相俟って、とはよく言ったもので
まさにそれだ。
童顔からは思いも寄らない壮絶な色気。
少年から青年へ花が綻んでいくような変化と
男しか持てない色気。
それを前面に押し出した状態で、目の前の女性に対して
とろりとした甘やかさを醸しながらジョミーは微笑んでいた。

直前までは元気の良さと無邪気さを魅力だと言っていたような
ジョミーの変化に、流石に皆驚いている。
女性とて例外ではない。
そんな彼女の髪が僅かに頬にかかっているのを見つけると
ジョミーはそっと指を伸ばす。
「ここ、乱れてる。
 とても可愛いけど、きみは耳の形も良いから
 こうして耳は出していたほうがぼくは好きかなあ」
茫然としている様子の彼女に、くすくすと笑いながら髪を調える。
調え終わっても優しく髪を梳く手は止めない。
「キースに会いたくて、ホストクラブなんてきたことなかったのに
 不安だけど頑張ってきて、漸く一緒にいられると思ったのに
 そのキースが傍から離れて怖くて寂しかったのかな」
「そ、そんなんじゃ・・・」
先程ヒステリーと言われても可笑しくない騒ぎを起こした理由を
簡単に言い当てられてしまい、女性は戸惑う。
その様子にジョミーは優しい笑顔を浮かべた。
「いいんだよ、素直になって。
 女の子は好きな人のために頑張って背伸びする姿も
 不安から戸惑ってしまう素直な姿も
 どちらだってとても可愛いんだから」
「ほんとう?」
「うん」
誰もが見ほれる甘い笑顔で頷くジョミー。
その様子にキースは意識を取り戻す。
ホスト達はホスト達で、見たこともないようなジョミーの様子に
皆驚きで思考が上手く働いていなかったのだ。
まずいな、とキースは思った。
相手はまだ社会慣れしていない子供の抜けきらない女性だ。
不安が多い時期に不安な環境で自分のことを理解してくれる
好青年かつ美青年に会ったらどうなるか分からないほど
キースは愚かではない。
「おい・・・」
キースが声をかけたところで変化したのはジョミーだ。
「あ、ごめん。
 ちょっと酔ったみたい」
(ちょっとじゃない、かなりだ!)
慌てるキースをよそにジョミーは暑いとばかりにボタンを外して
首筋と胸元を少し広げる。
まだ大人になりきっていないが、程よく筋肉のついたジョミーの体は
均整がとれていて、綺麗、とすら言える。
「おい!」
更に色気を振りまくジョミーにキースは頭を抱えたくなった。
この状況をジョミーは理解していないのが一番頭痛の原因だ。
そしてキースの不安は現実になる。
「ねえ、あなた。
 マザーにクビにされたって言っていたわよね?
 家主はお酒も飲ませてくれないような心の狭い人だとか!
 なら私のところにきなさいよ!
 パパに言って取り計らってあげるから」
完全に恋する女の子が積極的に相手に向かうようになって
そっとジョミーの手をとり、上目使いに見上げている。
その様子はかなり可愛い。
免疫のない男ならころりと行ってしまいそうだ。
ジョミーはホストとは言え見習い。
しかもどういう扱いを受けているのかキースも知っている。
つまり、免疫がない、と。
下手に手を出せば、店が危ない。
だが見過ごせば友人が危ない。
が。
ジョミーは優しく女性の手をとると首を横に振る。
「残念だけど、いいや。
 ぶるーがぼくの居場所になってくれるっていったから・・・」
そう言った笑顔は、今までのどの笑顔より幸せそうで甘やかなもの。
その笑顔を浮かべたままジョミーは女性に抱きついた。
・・・・いや、寝た。
ジョミーをきちんと見れば、
女性にもたれ掛かるように意識を飛ばしている。
「・・・帰るわ」
彼女はそう言うと携帯をとりだしどこかへ連絡を入れる。
「私よ、帰るから車を回してちょうだい。
 あと、一人客人を連れて帰るから人手もね」
付け足された一言にキースは慌てる。
流石にこれ以上は見過ごせない。
「まて!
 店で意識を失った客の面倒はこちらで見る」
ジョミーに手を伸ばそうとするキースに奪われないように
女性は確りとジョミーを抱きしめる。
「あら、彼は私の相席者よ?
 私が連れて帰ったって可笑しくないでしょう?
 そもそも彼が眠ってしまったのは私のせいだし」
「だがそいつは、きみとは行かないとはっきり言っただろう」
「それは酔っていたからかもしれないじゃない。
 私が連れてかえってきちんと介抱して
 もう一度ちゃんと意志確認するわ」
眠っている間に既成事実をつくってしまえば
ジョミーは了承せざるを得なくなるだろう。
「しかし・・・

「残念ながらそれは了承できませんよ。
 お嬢さん」

キースの言葉をが出るより先に、そこにはなかった声が
圧倒的な存在感をもってその場に響いた。














コメント***

「ブルーが居場所になってくれるって言ってくれたから行かない」

って言葉が書きたかったんです。

もっとジョミーのたらしを描いてみたかったのですが
どうもそれほどでもなかったような・・・。
とにかく、無自覚無意識のたらしなんです(爆)
酔って理性が働いていない分、羞恥も少ないので
いくらでも甘いことや臭いことを、熱っぽい表情で言ってしまう、と。