触れ合うほどに遠く









知っている。

でも気付いていない。

知っているから、気付けない。

気付けないから



知ることが出来ない。




真実はいつでも触れているのにとても遠い場所にある。






いけないとわかっている。




こんな関係。




だけど。







「いらっしゃい」
「こんばんは」
ブルーの差し伸べた手を取り、ジョミーは寝台への距離を詰める。
「今日はどうなの?ずっと寝ていたけど・・・・」
ジョミーの心配そうな声に、ブルーは言葉ではなく行動で返事をする。
自らの手に収まったジョミーの手の甲に口付ける。
「・・・大丈夫ってこと?」
呆れたようにジョミーが言うとブルーは顔を上げて微笑んだ。
「そう思っているから、来てくれたのだろう?」
「・・・・・」
その言葉にジョミーは少し膨れて黙ってしまう。
「最近、君のお陰かな。
 少し調子が良いみたいなんだ」
「それなら、いいけど・・・」
気のない声でジョミーは返す。
「信じていないのかい?」
「疑っているわけじゃない」
そんなジョミーの返事にブルーは苦笑してしまう。
言葉遊びが上手くなった。
疑っているわけじゃない。
それは信じているわけでもないということだろう。
気に、していないのだ。
何を言ったところで僕が何かを変えることはないと知っているのだ。
そう、知っているんだ・・・・。
「ジョミー」
ブルーがジョミーの名を、呼ぶ。
少し、低めの声で。
ジョミーの方がぴくりと震えた。
(知っているだろう?この呼び方の意味を)
ブルーの思いを聞いたわけではないが、ジョミーが更に寝台との距離を詰める。
1歩。
2歩。
それで寝台との距離は0。
ブルーはもう一度軽くジョミーの手を引く。
流されるままにジョミーの身体はシーツに沈んだ。





額や瞼に唇を落とす。
鼻に頬に顎に首筋に。
ゆっくりと口付けながらブルーはジョミーの服を脱がせていく。
脱がせ終わると今度は自分の服に手を掛ける。
素肌でジョミーに触れる。
触れ合う肌の温もり。
しっとりと馴染んで本当に一つになったように感じさせられる。
ジョミーはブルーが求めるままに抱かれ
ブルーはジョミーを酷く優しく扱う。
想いあう恋人同士のようなその行為。






だがそんなモノではなかった。





情事が終わるとすぐにジョミーは起き上がって服を身に着ける。
甘い時間は其処には、ない。
ブルーも何も言わずその様子を見守っていた。
いつものことなのだ。




袖を通す腕に目を向ける。
服を着る過程で、気付かれないように。
ブルーが触れた場所全てに目を通すが、ただ自分の肌が見えるだけ。
ブルーは決して跡を残さない。
所有の証は刻まない。
唇へのキスは、一度だけ。
初めてのとき。
夢現つだったブルーからのキス。
抱きしめられて寝台へ寝かされて深く接吻られた。
そして、呼ばれた誰かの名前。
聞き取れなかったけど、僕でないことだけは判った。
凄く痛かった。
分っていたのに一瞬でも期待した自分が愚かだ。
そのすぐ後、ブルーが夢から覚醒して、
酷く驚いた顔で僕を見た。
・・・きっと求めた相手と違かったから・・・。
ブルーが求めたのは聞き取れなかった名前の誰か。
僕じゃない。
だけど、それでもブルーが僕に触れるのが嬉しかった。
でもそんなこと言ってブルーを困らせたくない。
違う・・・・嫌悪されたくない。
本当はもっと深く接吻て欲しい。
この身体に、貴方のものだと刻みつけて欲しい。
でも・・・ブルーに劣情を抱いたことを知られるくらいなら
はしたないと思われる方がマシだった。
情事が終わってすぐに身支度を整えるのもその為だ。
甘い時間なんて過ごしたくない。
過ごしてしまえばしられてしまう。
だからすぐにいつものように戻る。
そうすることで、愛の無いフリを続ける。
ブルーを求めているのではなく、
『気が乗ったから』という理由を固持し続けなくてはならない。
だから・・・・。







ジョミーにキスをし押し倒していた。
そうだと気付いたのはジョミーから「ちりっ」とした思念を感じたとき。
僕はどう動いていいのか分らず固まってしまった。
何か言わなければ。
そう思っていたとき不意にジョミーから呟かれた言葉。
『僕でよかったら代わりに相手になるよ?
 僕もそのほうが気楽で良いし・・・・』
”代わり”の意味はわからなかったがそれ以外は解った。
恋愛感情が無い、身体だけの関係。
それなら抱いてもいいと、ジョミーは言った。
後腐れもなく、唯欲求を満たすだけの関係が良いと。
酷く痛かった。
何故そんなことを言うのかと思った。
だけど
抱いた。
どんな理由であろうとも、触れることを許してくれたから。
でもキスは出来ない。
あれは愛を示すものだから。
ジョミーにこの想いを悟られない為に唇だけは避ける。
所有の証は刻まない。
本当はこの心の内に潜む感情ありのままに接吻て
触れた場所全てに証を残して僕のものにしてしまいたい。
だが・・・知られてしまえば『気楽な相手』ではなくなってしまう。
だから・・・・。












どうか僕の本当の想いに気付かないで

















コメント***
何かものっそい暗い話ができました。
二人は一方通行の両思いです。
このままではあまりなので気が向いたら続きを書くかも知れません。
しかし取り敢えずはこんな終わりです・・・許してやって下さい。