綺麗な細い指がカードを並べていく。
そして形を画いて並べ終えると、一枚返した。
「塔の逆位値―――悩みや苦しみ」
「その原因は・・・」
フィシスはカードを返す。
「月の正位置―――過去、迷い、悩み」
「隠者の逆位値―――孤独、寂しさ、一人を望む」
「皇帝の正位置―――
 人の上に立つもの、戦争、堅固な意思、行動力・決断力がある。
 ・・・けれど精神的な孤独」
やはり、とフィシスは思ってしまう。
皇帝のカードはソルジャー・シンを表現するもの。
ジョミーを縛っているのは間違いなく過去だ。
孤独を恐れ、係わることを拒む。
「貴方の未来」
またカードが繰られる。
「悪魔の逆位値―――自由、束縛からの解放、執着をふりきる」
「その為には・・・」
今度は3枚をまとめて返した。
「力の正位置―――実力がある、自信を持つ、楽しむ」
「法皇の正位置―――縁、信じる、年長者の助け、よき相談相手」
「審判の正位置―――再会、縁、運命、良い出来事・・・」
声が途切れる。
「フィシスさん?」
何か悪い意味でもあるのかとジョミーは少し不安になる。
いくら占いで、自分で未来を選ぶと言ったとしても
悪い結果は出て欲しく無いのが人の心情だ。
「安心して下さい、ジョミー。
 悪い結果が出たわけではありません。
 これは・・・発想の転換を意味するカード」
そしてもう一つ意味がある。
"よみがえる愛"
フィシスは思わず笑みを零した。
「貴方は自由になれます。
 過去という束縛から」
「過去?」
「ええ。
 貴方にはそれから自由になる力がある。
 その為にはまず貴方が自信を持つこと。
 それから縁のある年長者の助けを得ること。
 その方は良き相談相手になって下さいます」
「過去に、何かあったかな?」
思わず考え込むジョミーの頬に暖かいものが触れる。
フィシスの掌だ。
「貴方が見つめるのは過去ではなく未来ですわ。
 ジョミー」
「うわっ!は、はい!!」
思わず真っ赤になってその手から逃れる。
年ごろの若者にフィシスの行動はかなり堪えた。
名残惜しげに手を引きながら、フィシスは口を開く。
「そういえばブルーをご存知なのですよね?」
「ええ、まあ。
 同じクラスで同じ部ですから」
何となく目をそらしながら言うジョミーに、苦笑して訊ねた。
「苦手なのかしら?」
「・・・・実は、少し。
 何て言うか、近づきたくないんです」
その言葉にフィシスは両手を合わせて、少し嬉しそうな声をあげる。
「では、貴方が頼るべき相手はブルーですわね」
「なんで!?」
考える間もなくジョミーは叫んだ。
だが相変わらずフィシスはにこにことしている。
「言ったでしょう?
 審判のカードは発想の転換を意味するカード。
 近づきがたいというのなら、敢えて傍に寄る。
 それにより良い出来事があります。
 そして、ブルーは年長者。
 条件に一番あっているように思いますから」
それに法皇は、ブルーを表すカードだ。
「でも・・・」
やはりブルーに近づくのは・・・怖い。
俯いてしまったジョミーの手をフィシスは優しくとる。
「もちろん、選ぶのは貴方です。
 ただの参考意見だと思って下さい」
「・・・はい」
本当に女神のような笑みのフィシスに言われては、頷くしか出来なかった。












「ブルーに、歩み寄る?」
ベッドに身を投げ出してジョミーは呟いた。
件の相手の姿を思い描く。
まだ、1日と少ししか会っていないのに
はっきりと思い浮かべられる。
優しげで、何処か寂しそうな顔。
あの顔は嫌いだ。
それに・・・。
「やっぱり、怖いな・・・」
囁くように漏らしながらジョミーは瞼を落とす。
最初の印象が消えない。
銀色に見えた髪と、赤く揺らめいた瞳。
それが痛いほどに胸を締めつけてくる。
またあの感覚に触れるのはとても怖かった。
ジョミーは軽く息を吐くと体勢を変える。
それと同時にイメージを消し去る。
こんなものを思い描いていてはいつまでも眠れない。
(今日は、色々あって疲れたし、
 考えるのは明日にしよう・・・)
そう割り切ると、意外と気が抜ける。
そのままゆったりと眠りの淵に落ちていった。









コメント***

よし!フィシス様頑張ってくれました!!
ジョミーが素直にブルーに歩み寄ってくれればいい・・・な・・・。

タロットを意味まで出したのはただの趣味です。
ついでにDVDに付いてきたカードが
確かに意味まんまだと思ったので活用させていただきました。