友達になるためにすべきこと。
それはまず、お近づきになること。




「ということで、よろしく」
にこにことした笑顔でブルーが言った。
「・・・・・」
なにが、『と、いうこと』なのか。
とジョミーは思う。
関わらないで欲しいと、近づかないで欲しいという願いを
聞き届けてくれたのは本日の昼休み。
つい先ほどだというのに。
宜しくされたのは放課後。
生徒達が部活に勤しむ時間。
ちなみにココは園芸同好会。
現在在籍者は4名。
ユウイ・キム・ハロルド・ジョミー。
顧問のゼル先生。
其処に突然現れた復学生。
「おお、やったじゃないか!
 これで5人になるからようやく部として認定されるよ!」
ハロルドが大喜びでブルーを迎え入れる。
「ほんとうに!これで花だけじゃなくて
 野菜も育てられるようになるかも!」
キムも期待を露にした。
「うん、1年生だけの同好会だったから少し心配してたけど
 ブルーさんは年齢的には一つ上で、頼りになりそうな人だし
 なによりも、やっぱり部となれば活動の幅も拡がるからね」
ユウイも嬉しそうに笑顔を見せる。
(う、・・・拒否できない・・・)
ジョミーだけがどんよりとした何かを背負っていた。
この部(まだ同好会)の部長はジョミーだ。
入学早々、塵芥の捨てられた花の無い花壇を見て
周り中に声を掛けてまわった中で、入部してくれた部員達と
ゼル教諭が顧問を引き受けてくれたお陰で同好会が成立できた。
部長だからと言って、既に皆の部となったそこで
自分の独断で新入部員を拒否などできない。
しかも、5人いれば同好会から部に昇格でき
部費が支給され、活動の幅も大きく拡がる。
「じゃあ、これに名前とクラスを書いて下さい」
ジョミーは深い溜め息とともにブルーの入部届を渡した。
「わかった」
笑顔で受け取るブルーは何処までも嬉しそうだった。





ゼル先生が部活昇格申請の書類を取りに行っている間
部室は当然生徒達だけになる。
「そういえばブルーさんはどうして園芸同好会に?」
「ブルーで良いよ。同じ学年なんだから。
 そうだな・・・太陽が見えたから、かな」
ユウイの問いに対するブルーの応え。
「太陽、ですか?」
「そう、太陽。
 太陽の傍は暖かくてとても惹かれるんだ」
その視線の先にはジョミーがいるが、ユウイは気付かない。
ただ、その"太陽"が本当の意味での太陽でないことと
とても大好きだということだけは良く分った。
「その太陽、見失わないと良いですね」
「ああ、ありがとう」


その会話とは少し離れたところでジョミーとキムがもめていた。
「だから、野菜育成も考えるって。
 でもこれだけは譲りたくないんだ」
「何言ってるんだ、ジョミー。
 そんなこと為て何になるんだよ。
 大体どれだけの量になると思ってるんだ?」
「勿論、ただの草は飼育部にでもうさぎの餌とかで使ってもらうよ。
 だから、少しで良いから!!」
ジョミーが辛そうに叫ぶ。
「なんでそんなに剥きになるんだよ」
「いやなんだよ!!」
「どうしたんだい?」
突然、ブルーの声が割って入った。
二人の声が大きくなっていて、部屋中に響き渡っていたので
ブルーだけでなくユウイもハロルドも二人を見ていた。
その事実に、二人とも俯いてしまう。
「二人は何を揉めていたんだい?
 もし部の方針に関わることなら、全員に話すべきだろう?」
ブルーはそんな二人に、話すように促す。
「コイツが・・・」
先に口を開いたのはキムだ。
「ジョミーが?」
「花壇で草むしりした雑草で、花壇を造りたいって・・・」
「雑草で花壇?」
不思議そうなブルーの声に、ジョミーはカッとなった。
弾かれたように叫びだす。
「雑草じゃない!確かに花壇の花には良くないかもしれない!
 でもちゃんと花を咲かせるんだ!
 花を咲かせられるように生まれてきたのに、
 こっちの都合でいるいらないと枯らせるなんて酷いじゃないか!
 花壇を完ぺきにしたいなら、別の花壇で咲かせればいい!
 小さな雑草が咲かせる花だって、可愛いし綺麗なのに・・・。
 せっかく生まれたのに・・・」
最後の方は徐々に消え入りそうになっていく。
(ジョミー・・・)
「そうだね」
ブルーが聞き取りづらいほど微かな声でいった。
「でもジョミー」
「なん、ですか」
「ぼくは別の花壇を造るという意見には反対だ」
きっぱりとブルーは言い切った。
「なんっ・・・」
ジョミーが声をあげようとしたが、それより先にブルーは続ける。
「だって、花を咲かせられるならそれは雑草じゃないだろう?」
「え?」
「折角その花壇に生まれてきたのなら
 一緒の花壇で育ててあげたくはないかな?」
「それは、そうですけど・・・」
だが、雑草はどうしたって花壇の栄養を奪う。
「なら相性の良い花同士を調べて、同じ花壇に植えてしまおう」
「!」
「そんなことができるんですか?」
皆が一様にブルーに視線を向ける。
「さあ」
だがブルーはあっさり答えた。
「さあって・・・」
ハロルドが脱力しそうになったところに、ジョミーの声が響いた。
「できるか、じゃない。
 やろう!
 少しでも可能性があるなら、何もしないよりずっと良い!」
何かを決めたジョミーの声はとても強く人の心を奮わせる。
「ま、悪くないしな」
まずはキムが頷いた。
「ぼくも、そういうことなら賛成だ」
続いてユウイも頷く。
「俺も反対する理由はないぞ」
ハロルドも勿論頷いた。
「提案者のぼくが反対するわけもないだろう?」
全員が賛成してくれ、ジョミーはぱっと明るい笑顔になった。













コメント***
雑草もかわいいですよ。
野辺に咲く花は結構可愛いものが多かったりします。
色とりどりですし。