機械みたいな意思で。





抱きしめられて、優しく口付けられて
ジョミーは恥ずかしそうに顔を逸らした。
「やっ・・・キースやめて」
「何故だ?」
訊ねながら、今度は向けられた頬に、耳に、口付けを落とす。
「何故って、恥ずかしいし・・・」
「だが好きだろう?」
「何言っ・・・んっ・・・」
あまりに恥ずかしいことを言われて、反論しようとしたジョミーの口を
キースは己のそれで塞ぎ、
更に、言葉を奪うように深く接吻る。
驚いて逃げ惑う舌に執拗に追いかける。
「んっ・・・う・・ん・・・」
ジョミーはキースの胸に当てた手を握り、
意識が朦朧として力が抜けるのを何とか耐えようとする。
「・・・んっ・・ふっ・・うん・・」
激しい接吻の合間に少しずつ呼吸はできている。
だがそれでも酸素が足りない。
どうしたって頭が回らなくなる。
「ん・・・」
腕から、力が抜けた。
それに気付いたキースはジョミーの口を解放してやる。
「・・・っは・・あ・・・」
途端にジョミーは自由になったそれでひたすらに酸素を求めて呼吸する。
その間にキースは力の抜けた体を横たえた。
「キース・・・」
「大丈夫だ」
少し不安げに見上げてくるジョミーに微笑みかけ、
キースはゆっくりとジョミーの身体のラインをなぞる。
「やはり細いな」
「軍人のキースと一緒にしないでよ」
むうっと剥れたジョミーが可愛くてキースは思わず笑ってしまう。
「笑うな!これでも僕はちゃんと筋肉付いているんだからな!!」
その言葉に、キースは今度は少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「では見せてもらおうか」
「えっ、あっ・・待って!」
しまったと思ったときにはもう遅かった。
キースの狙い通りになってしまった。
奇しくもジョミーは己で自分の身体を見せる口実を与えてしまった。
「卑怯だ」
ジョミーは更に剥れてしまう。
だがキースはしれっと言ってのけた。
いや、当たり前と考えていたから
当たり前だとばかりに言っただけかも知れない。
「安心しろ、お前が言わなくてももともと脱がす予定だった」
しかしジョミーには堪ったものではない。
「安心じゃないじゃないか!!」
思わずキースを押し返すように手を伸ばして叫ぶジョミーに
キースは少し寂しげな目を向ける。
「ミュウの長としてのその服を脱がせたい」
「キース・・・」
「一糸纏わぬ姿になれば、おれ達になんの違いがある?」
「それを、貴方が言うのか?」
人間が、ミュウを排除したのに。
「人間としてなら、確かにおれとお前は違うというだろう」
だがキース・アニアン個人としてなら。
「おれはお前達と何も変わりはしないと思っている」
「やっぱり、卑怯だ・・・・」
そう呟いて、顔を背けたままジョミーは抵抗する腕を降ろした。
「そうかもな」
言いながらキースはジョミーの服をゆっくりと脱がせていく。
ミュウでも人間でもなく、ジョミーとしての姿に。







『止めろ!!!!!!』







ジョミーの意思が響き渡った。
「ソルジャー?」
頭を抱えて今みた映像を忘れようとするかのように首を振りながらジョミーは叫ぶ。
「ニセモノだ!
 こんなもの・・・・ただの妄想だ!!
 死んでも本当のことは読ませないためのただの妄想だ!!」
『ソルジャー、落ち着いて下さい』
「待って下さい、そういきなり深層心理を刺激しては・・・・」
『安心してくださいソルジャー・・・誰も貴方があの男と・・・
 その、「こんなふうになっている」とは思っていませんから』 
「当たり前だー!!
 兎に角!コイツを基地内においておくな!!
 外の・・・・宇宙船に移しておけ!!」
ジョミーは叫んで部屋を出てしまった。







「しかし、人間の妄想がココ迄とは・・・」
「少し侮っていました」
残された面々は、キースを見ながら口々に言い合う。
『しかし・・・・』
男の意識(もとい妄想)に映し出されたジョミーは・・・・。
ハーレイは咳払いをしてそこで思考を中断させた。
「兎も角ソルジャーの言いつけ通りに」
「はっ、はい」
慌てて他のメンバーも行動を開始する。
キースを運びながら、ミュウ達には何とも言えない殺意と
僅かな憧れと、微かな共鳴感が沸き上がっていた。






コメント***
別名「キース君の妄想記」
漫画で、キースは機械みたいな意思で
『死んでも本当のことは読ませない気でニセの情報を流しつづける』
とあったので「いっそ妄想にしてしまえ!」と誕生いたしました。
最初から、ずっとキースの妄想です。
妄想なので背景もピンク色で(笑)
もしかしたら裏で続くかも知れません。