雪が降っていた。
白い、白い。
その雪の中でたたずむ人。
じっと、目の前の石を見つめていた。
何も言わず、じっと・・・。
雪だけが静かに降り積もる。


微かに唇が動いた。
紡がれたのは石に刻まれた文字。
「ソルジャー・・・・」
その言葉とともに、一筋だけ涙が伝う。
翠の瞳がゆっくり閉じられて開かれる。
もう、涙は流れていなかった。








横にいたその人が、振り返る。
「おいで、ブルー」
呼ばれて、隣に並んだ。
その肩を抱くように引き寄せられる。
「ブルーは、ぼくが責任をもって育てるから。
 ちゃんと守るって約束するから・・・。
 だから、安心して眠って下さい」
そう、悲しげな微笑みで告げた。
石に刻まれていたのはブルーの父のもの。
ブルーを連れて、この人と再婚した・・・。
偉大な人だった。
仲間を大切に思い、慕われ
仲間のために散って逝った人。
ブルーも父が大好きだった。
とても尊敬していた。

ただ一つを除いて。

この人を愛して、この人と結ばれて
この人と僅かな時間しか過ごすことなく
この人に、自分を託して、仲間と、全てを託して
この人と自分と仲間のために、
この人を置いて逝ってしまったことだけは嫌いだった。